遺伝的多様性

私たち人間の社会性を例に考えてみましょう。全く同じ遺伝子で、同じ見た目・同じ性格・同じ能力…と全く同じ人々からなる集団は、どのように生活するでしょうか? 多様な個性の人々からなる集団に比べて、何か問題が起きても解決の選択肢が少なくなるでしょう。手に入れたい物が同じ故に争いも起こりやすいかもしれません。しかし実際の私たちの社会は、活動的な人・控えめな人・好奇心が強い人・保守的な人…など、さまざまな個性の人から成り立っています。このおかげで、私たちは多様な考え方から意見を出し合うことができ、それぞれの短所・長所を補いあうこともできます。つまり、遺伝子多様性は生き物のあらゆる可能性を広げ、同時にリスク対策を厚くしているのです。 遺伝的多様性は、より良い遺伝子を子孫に残すために、さまざまな個性の異性の中からパートナーを選んだり、トラブルに遭遇してもそれぞれの個体が多様な反応で対処したりすることにより、一様に死に絶えてしまうリスクを低減しています。また、遺伝的多様性は生き物の進化やその多様性を支えるものでもあります。たくさんの個性の中から、より環境に適した個体が生き残り、子孫を残すことが繰り返されることによって、その特徴が固定化され新たな種を生み出すなど、種多様性の豊かさにも深く関係しています。 遺伝的多様性が豊かな個体群の中では、その生き物の中でもよりその環境に適合した個体が子孫を残しやすくなります。より豊かなパートナーの選択肢の中から子孫を残すことができ、結果としてその環境で淘汰されるリスクを個体群全体として低減することができます。つまり遺伝的多様性は、その環境に生息する生き物の種全体としての適応力とも直結します。遺伝的多様性が豊かでたくさんの個性の異なる同種が存在すれば、環境の変化や突発的なトラブルが起こっても、それに適応できる個性を持った個体が生き残り絶滅から免れる確率を上げることができるのです。